先に、要点だけ
- 認知症は高齢者の約3.6人に1人に関わる、ごく身近な状態。あなたの家庭が特別なわけではありません
- 種類によって症状も対応も違うので、受診して「どの種類か」を確かめることが出発点
- 治療で良くなる「治る認知症」もあるため、自己判断で決めつけないことが大切
決して、めずらしい病気ではありません
日本の認知症の高齢者は、推計で約443万人。その前段階とされるMCI(軽度認知障害)の約559万人を合わせると1,000万人を超え、高齢者の約3.6人に1人にのぼります(厚生労働省研究班・2022年推計)。2040年には認知症だけで584万人になると見込まれています。
つまり、誰の家族に起きてもおかしくない、ごく身近な病気です。あなたの家庭が特別なわけではありません。
国も2024年に認知症基本法を施行し、「認知症になっても、できることややりたいことがあり、希望を持って自分らしく暮らし続けられる」という「新しい認知症観」を掲げています(政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」)。認知症は「終わり」ではなく、これからをどう生きるかの始まりでもあります。
「認知症」は病名ではなく、状態の名前
意外に思われるかもしれませんが、認知症は一つの病気の名前ではありません。さまざまな原因(脳の病気)によって記憶や判断などの働きが低下し、日常生活に支障が出ている状態の総称です。
原因となる病気はいくつもあり、種類によって症状の出方も、経過も、対応のしかたも違います。だからこそ「どの種類か」を受診で確かめることが、見通しを立てる出発点になります。
4大認知症 ― それぞれの特徴
代表的な4つで、認知症全体の大部分を占めるといわれます(割合は調査によって幅があり、下表はおおまかな目安です)。
| 種類 | 割合の目安 | いちばんの特徴 |
|---|---|---|
| アルツハイマー型 | 最も多い(約7割) | もの忘れから始まり、ゆっくり進む |
| 血管性 | 2番目(約2割) | 脳梗塞・脳出血が原因。段階的に進み、症状に「むら」 |
| レビー小体型 | 数% | 幻視(ないものが見える)、調子の波、体のこわばり |
| 前頭側頭型 | 数% | 性格・行動の変化が目立つ。若い年代でも |
アルツハイマー型認知症
新しいことを覚えにくくなるもの忘れから始まることが多く、時間や場所が分からなくなる症状へと、年単位でゆっくり進みます。
家族が気づくきっかけ:同じことを何度も聞く。しまい忘れ・置き忘れが目立つ。約束を忘れる。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血が原因です。脳のどこが傷ついたかで症状が変わり、手足の麻痺や言葉の出にくさを伴うことがあります。「できること」と「できないこと」の差が大きい(まだら認知症)、感情のコントロールが難しくなる、といった特徴も。再発のたびに段階的に進むため、血圧・糖尿病など生活習慣病の管理が進行予防の鍵になります。
家族が気づくきっかけ:脳卒中のあとから様子が変わった。突然泣く・怒るなど感情の波が大きい。
レビー小体型認知症
「レビー小体」という特殊なたんぱく質が脳にたまって起こります。特徴的なのは、「部屋に知らない人がいる」「虫が見える」といったリアルな幻視。1日のなかで頭がはっきりした時間とぼんやりした時間の波が大きく、パーキンソン症状(動作が遅くなる、歩幅が小さくなる、転びやすくなる)を伴うことがあります。睡眠中に大声を出す・暴れる(夢を見て体が動いてしまう)症状が、何年も前から先行することも。
なお、レビー小体型の方は一部の薬(特に抗精神病薬)に過敏に反応しやすいため、薬の使用は専門医による慎重な判断が必要です。
家族が気づくきっかけ:見えないものを見えると言う。転倒が増えた。日によって別人のように調子が違う。
前頭側頭型認知症
人格や理性をつかさどる前頭葉・側頭葉が縮むタイプです。もの忘れよりも、性格の変化・社会のルールを守れなくなる・同じ行動を繰り返すといった変化が目立ちます。50〜60代の比較的若い年代で発症することがあります。なお、この型の背景にある「前頭側頭葉変性症」は国の指定難病(指定難病127)で、診断基準などを満たすと医療費助成の対象になります。「本人のわがまま」「人が変わった」と誤解されやすく、発見が遅れがちです。
家族が気づくきっかけ:温厚だった人が万引きなど普段と違う行動をする。毎日同じ時間に同じ行動を繰り返す。
似ているけれど違うもの ― せん妄・老人性うつ
認知症と間違われやすい状態が2つあります。
- せん妄:入院や薬、脱水などをきっかけに急に混乱する状態。数時間〜数日の単位で波があります。原因に対処すれば戻ることが多く、「急におかしくなった」ときはまずこちらを疑い、すぐ医療機関へ。
- 老人性うつ:意欲低下や「もの忘れの訴え」が認知症に似ています。治療で改善する病気なので、見分けが重要です。
「急な変化」「気分の落ち込みが主」の場合は、認知症と決めつけず受診で確かめましょう。
「治る認知症」もあります
原因によっては、治療で改善が期待できるものがあります。
- 正常圧水頭症(脳に水がたまる。歩行障害・尿失禁を伴いやすい)
- 慢性硬膜下血腫(頭を打った後に血がたまる)
- 甲状腺機能の低下、ビタミン欠乏 など
これらは適切な治療で良くなる可能性があります。受診が大切な理由は、この「治るタイプ」を見逃さないためでもあります。
よくある質問
Q. 認知症は遺伝しますか?
大多数の認知症は、遺伝だけで決まるものではありません。家族に認知症の人がいても、必ず発症するわけではありません。ごく一部に遺伝性の強い型がありますが、まれです。心配な場合は専門医に相談を。
Q. 若くても認知症になりますか?
65歳未満で発症する「若年性認知症」があります。働き盛りの発症は仕事やお金の問題が大きいため、専門窓口(若年性認知症コールセンター 0800-100-2707)があります。→ ご本人向け:働き続ける
Q. 認知症と診断されたら、もう何もできなくなる?
いいえ。診断直後から何もできなくなるわけではなく、多くの場合ゆっくり進みます。できることはたくさん残り、特に初期は工夫しながらそれまでの生活を続ける人が大勢います。→ 進行と見通し、ご本人向け:認知症とともに生きる
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※本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
参考・出典
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