先に、要点だけ
- 認知症は病名ではなく、認知機能の低下によって日常生活に支障が生じている状態の総称
- 初期症状や経過は原因によって異なる。急な変化は認知症と決めつけず、速やかに医療機関へ
- 診断後も本人の意思とできることを尊重し、治療・生活支援・介護サービスを組み合わせる
- 家族だけで抱えず、かかりつけ医や地域包括支援センターへ早めに相談する
認知症とは
認知症とは、さまざまな病気によって記憶・判断・言語などの認知機能が低下し、日常生活に支障が生じている状態の総称です。アルツハイマー病だけを指す言葉ではなく、原因となる病気によって症状や経過が異なります。
大切なのは、診断された直後から何もできなくなるわけではないことです。認知症基本法も、本人の意思を尊重し、認知症になっても希望を持って暮らせる社会を基本理念にしています。
日本ではどれくらいの人が認知症なのか
政府推計では、2022年の65歳以上の認知症高齢者は約443万人、MCI(軽度認知障害)は約559万人です。2025年の認知症高齢者は約472万人、65歳以上の12.9%と推計されています。
「認知症」と「認知症+MCI」を混同すると割合が変わるため、数字を見るときは対象と推計年を確認する必要があります。
年相応のもの忘れ・MCI・認知症の違い
| 状態 | おおまかな目安 |
|---|---|
| 年相応のもの忘れ | 体験の一部を忘れても、手がかりがあれば思い出せることが多く、生活への支障は小さい |
| MCI | 認知機能の低下はあるが、基本的な日常生活はおおむね保たれている |
| 認知症 | 認知機能の低下によって、仕事・家事・金銭管理など日常生活に支障が出ている |
この表だけで診断はできません。MCIは必ず認知症へ進む状態ではなく、そのまま保たれる人や正常域へ戻る人もいます。詳しくは認知症の初期症状と年相応のもの忘れの違いをご覧ください。
主な初期症状と受診を考えたいサイン
次のような変化が繰り返し現れ、以前より生活に支障が出てきた場合は、医療機関への相談を考えます。
- 同じ質問や話を何度も繰り返す
- 約束、服薬、支払いを忘れることが増える
- 慣れていた料理、運転、家電操作でミスが増える
- 日時や場所が分かりにくくなる
- 言葉が出にくい、会話の理解が難しくなる
- 意欲低下、性格や行動の目立った変化がある
- 実際にはないものが見えると訴える
一方、片側の手足が急に動かしにくい、ろれつが回らない、突然の強い頭痛など脳卒中を疑う症状がある場合は、直ちに119番へ連絡してください。数時間から数日のうちに急に混乱した、発熱を伴うといった場合も認知症の進行とは限らないため、速やかに医療機関へ相談してください。
原因となる病気と代表的な種類
| 種類 | 主な特徴 |
|---|---|
| アルツハイマー型認知症 | 新しい出来事を覚えにくくなる症状から始まり、徐々に進むことが多い |
| 血管性認知症 | 脳梗塞や脳出血などが背景にあり、障害された部位によって症状が異なる |
| レビー小体型認知症 | 幻視、認知機能の変動、動作の遅さや転びやすさなどがみられることがある |
| 前頭側頭型認知症 | もの忘れより、性格・行動・言語の変化が先に目立つことがある |
種類ごとの割合は調査方法や対象によって変わるため、症状だけで自己判断しないことが重要です。
何科を受診し、どのように診断するのか
最初はかかりつけ医へ相談できます。専門的な評価が必要な場合は、もの忘れ外来、脳神経内科、精神科、老年内科、認知症疾患医療センターなどにつながります。
診断では、本人と家族から生活上の変化を聞き、認知機能検査、身体診察、血液検査、CT・MRIなどを必要に応じて組み合わせます。点数だけで認知症と決まるものではありません。受診前に「いつから、どのような変化が、どれくらいの頻度で起きたか」をメモしておくと役立ちます。
詳しい準備と当日の流れは認知症の受診・検査の流れで確認できます。気づいた変化や服薬、質問を整理するときは、認知症の受診準備メモを印刷して使えます。
認知症の治療と支援
治療は、原因となる病気、症状、生活状況に合わせて組み立てます。
- ドネペジルなど、認知機能の症状を一時的に改善することが期待される薬
- アルツハイマー病によるMCI・軽度認知症の一部を対象とする抗アミロイドβ抗体薬
- 運動、生活環境の調整、社会参加、リハビリテーション
- 介護サービスや家族への支援
- 高血圧・糖尿病・難聴など併存する病気や状態への対応
抗アミロイドβ抗体薬は誰にでも使える薬ではなく、アミロイドの確認、専門施設での評価、MRIによる副作用監視が必要です。症状を完全に元へ戻す治療ではありません。詳しくは認知症の薬と治療をご覧ください。
治療可能な原因による認知機能低下もある
正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺疾患、ビタミン欠乏、薬の影響、うつ、せん妄などが、認知症に似た症状を起こすことがあります。原因への治療で改善が期待できる場合がありますが、必ず元に戻るとは限りません。
自己判断で「年のせい」「認知症だから仕方がない」と決めつけず、受診して原因を確かめることが大切です。
発症を遅らせ、リスクを下げるためにできること
認知症を確実に防ぐ方法はありません。一方で、運動、禁煙、過度の飲酒を避けること、高血圧・糖尿病・LDLコレステロールの管理、難聴への対応、社会的なつながりなどは、集団全体でみた発症リスクの低下と関連しています。
「これをすれば認知症にならない」と考えず、無理なく続けられる生活習慣として取り入れます。詳しくは生活習慣で認知症リスクを下げるをご覧ください。
家族が気づいたときの入口
変化が始まった時期と具体例を記録し、本人を責めずに医療機関へ相談します。医療・介護・制度を一緒に整理したい場合は、本人が住む地域の地域包括支援センターも利用できます。
具体的な順序と準備は家族が認知症かもしれないとき、最初にすることで案内しています。
受診を嫌がる場合は、受診を嫌がるときの声かけと相談先を参考にしてください。介護保険を含む全体の流れは親が認知症と診断されたらで案内しています。
相談先が分からないときは、地域包括支援センターの探し方または厚生労働省の相談先一覧を利用できます。
よくある質問
Q. 認知症の最初の症状は何ですか?
同じことを何度も尋ねる、慣れた作業でミスが増える、日時や場所が分かりにくくなるなどが一例です。ただし症状は原因や人によって異なり、セルフチェックだけでは診断できません。
Q. 認知症とMCIは同じですか?
同じではありません。MCIは認知機能の低下があるものの、日常生活への支障が認知症ほど明確でない状態です。必ず認知症になるわけではなく、状態を保つ人や正常域へ戻る人もいます。
Q. 認知症が疑われるときは何科へ行けばよいですか?
まずはかかりつけ医に相談できます。専門診療では、もの忘れ外来、脳神経内科、精神科、老年内科、認知症疾患医療センターなどが候補です。
Q. 認知症は治りますか?
原因となる病気によって異なります。多くの認知症には根治療法がありません。症状を一時的に改善することが期待される薬があり、一部の早期アルツハイマー病では臨床的な進行を遅らせることが示された薬もあります。また、治療可能な別の病気が認知機能低下を起こしている場合があります。
Q. 家族が最初にすることは何ですか?
変化が始まった時期と具体例を記録し、本人を責めずに受診へつなげてください。詳しい行動手順は「はじめての方へ」で案内しています。
次に読む
- 認知症の初期症状と年相応のもの忘れの違い
- 認知症の進行と今後の見通し
- 認知症の受診・検査の流れ
- 認知症の受診準備メモ(無料・印刷用)
- 認知症の薬と治療
- 認知症の行動・心理症状(BPSD)への対応
- 地域包括支援センターの探し方
※本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
参考・出典
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