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認知症の「困った行動」への向き合い方 ― BPSDと対応のコツ・会話例

公開: 2026年6月12日 / 最終更新: 2026年6月13日

先に、要点だけ

  • 「困った行動」には本人なりの理由(不安・混乱・体調)があり、わざとではありません
  • 正面から否定・訂正するほど悪化しがち。「受け止めて、そらす」が基本形
  • 急に様子が変わったときは BPSD ではなく体の病気やせん妄の可能性。すぐ主治医へ

夕方になると「家に帰る」と言い出す

自宅にいるのに「そろそろ家に帰ります」と荷物をまとめ始める。「ここがお母さんの家だよ!」と説明しても、納得しない。何度も繰り返されて、こちらの心が折れそうになる。

こうした行動はBPSD(行動・心理症状)と呼ばれます。介護でいちばん消耗するのがここです。最初に2つ、知っておいてください。

  1. 本人はわざと困らせているのではありません。 不安、混乱、体の不調、居心地の悪さ。行動の裏には必ず本人なりの理由があります。
  2. 関わり方と環境しだいで、やわらげられることが多い症状です。 打つ手はあります。

基本形は「受け止めて、そらす」

どの場面にも共通する型があります。

  • 否定・訂正・説得で正面からぶつからない(事実を正すより、安心を優先)
  • 気持ちをいったん受け止める(「そうなんだね」「心配だね」)
  • 別の話題・行動にそっとそらす(お茶、散歩、好きな音楽)
  • うまくいかなければいったん離れる(数分おいて仕切り直すと収まることも)

場面別 ― そのまま使える会話例

「財布を盗られた!」(もの盗られ妄想)

いちばん身近で世話をしている人が疑われやすい症状です。理不尽ですが、本人は本気で不安なのです。

  • ✕「私が盗るわけないでしょう! 自分でしまったんでしょ」(対立が深まる)
  • ○「それは大変。一緒に探そう」(不安に寄り添う)

コツ:見つけても「ほら、あったじゃない」と責めない。本人が自分で見つけられるように仕向けるか、見つけたものをそっと元の場所に戻して本人に発見してもらうと、面目が保たれます。疑われやすい人が一人で対応せず、家族で交代する/別の人が一緒に探すのも有効。通帳や現金などは、渡した・預かった記録を残すとトラブルを防げます。

「家に帰ります」(帰宅願望)

「帰りたい」の中身は、場所ではなく「安心できる場所に行きたい」という気持ちであることが多いといわれます。

  • ✕「ここがあなたの家でしょう!」(混乱と不安が増す)
  • ○「もう遅いから、お茶を飲んでからにしましょう」(受け止めて、そらす)

夕方に増える場合は、部屋を早めに明るくする、夕方に役割(洗濯物をたたむ等)をお願いする、も有効です。

同じことを何度も聞く

本人にとっては毎回「初めて聞く」ことです。

  • ✕「さっきも言ったでしょう」(本人は責められた感情だけが残る)
  • ○ そのつど短く答える。よく聞かれることは紙に書いて見える場所に貼る(「次の通院は◯月◯日」)

お風呂を嫌がる

怖い・面倒・裸になるのが恥ずかしい。理由はさまざまです。

  • ✕「臭うから入って!」(自尊心を傷つける)
  • ○ 時間帯や誘い方を変える。「温泉の素を入れたよ」「体を拭くだけでも」。デイサービスの入浴に任せるのも立派な解決策です。

急に怒る・興奮する

  • ✕ 言い返す、押さえつける(エスカレートする)
  • 少し距離を取り、安全を確保して、落ち着くのを待つ。落ち着いたら何事もなかったように接する

外に出てしまう・帰れなくなる(ひとり歩き)

BPSDの中でもっとも命に関わるのがこれです。「家に帰る」「仕事に行く」と外に出て、戻れなくなる。真夏・真冬は数時間でも危険で、毎年、行方不明・死亡の事例があります。叱って閉じ込めるのではなく、出ても見つかる備えをしておきましょう。

事前の備え(いなくなる前に)

  • GPS端末・見守りタグ(くつ・かばん・杖に)、玄関の開閉センサーやチャイム
  • 衣類・持ち物に名前と連絡先(はり付け式の「見守りシール」、QRコード付きのものも)
  • 自治体の「SOSネットワーク」「見守り・徘徊登録」に事前登録(多くの市区町村にあります。地域包括支援センターに相談を)
  • 近所・最寄りの交番・よく行く店に「見かけたら連絡を」と顔写真を共有しておく
  • 最近の顔写真と全身写真を用意(捜索のときすぐ渡せる)

いなくなったとき

  • 早い段階でためらわず110番(「認知症で行方が分からない」と伝える)。遠慮して待つほど危険です
  • 地域包括支援センター・自治体のネットワークにも連絡

「急な変化」は別もの ― すぐ医療へ

きのうまで穏やかだった人が急に混乱した・別人のようになった。そんなときはBPSDではなく、せん妄(体の不調などで起こる急な意識の混乱)の可能性があります。

せん妄は、こんな特徴があります。

  • 急に(数時間〜数日で)始まり、1日のなかで波がある(昼はうとうと、夜に興奮するなど)
  • ぼんやり〜興奮を行き来する、幻視(見えないものが見える)、夜に悪化しやすい

そして多くは、きっかけ(誘因)があります。

  • 感染(とくに尿路感染・肺炎)、脱水・便秘・痛み、新しく始めた薬、入院や環境の変化

せん妄は、原因に対処すれば元に戻ることが多い状態です。我慢して様子を見ず、早めに主治医に連絡してください。

よくある質問

Q. 薬で抑えられないのですか?

BPSDに薬を使うことはありますが、まず関わり方と環境の調整が基本で、薬はその次の選択肢です。強い興奮や幻覚で本人や家族の安全に関わる場合は、遠慮なく主治医に相談を。「薬に頼るのは悪いこと」ではありません。

Q. 暴力・暴言がひどく、限界です。

あなたの安全が最優先です。距離を取り、ケアマネ・主治医に「限界だ」とそのまま伝えてください。ショートステイで物理的に離れる、入院や施設を検討する。どれも「逃げ」ではなく、正当な選択肢です。

Q. 対応がうまくいきません。私のせいでしょうか?

いいえ。同じ対応でも、日によって・相手によって結果は変わります。正解を一発で引ける人はいません。うまくいった方法を緩く続けて、ダメな日は「そういう日」と流す。それで十分です。疲れがたまっていると感じたら、介護する家族の心を守るも読んでみてください。

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※本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。対応に困るときや急な変化があるときは、専門職・医療機関にご相談ください。

参考・出典

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