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診断・受診受容・体制づくり

認知症の薬と治療 ― 進行を遅らせる薬、新しい薬のこと

公開: 2026年6月12日 / 最終更新: 2026年6月13日

先に、要点だけ

  • 認知症を完全に治す薬はまだないが、進行をゆるやかにする薬はある
  • 新薬(レカネマブ等)は早期のアルツハイマー病が対象。使えるかは専門医の判断
  • 薬の効き方は人それぞれ。自己判断でやめず、気になることは医師・薬剤師へ

まず、正直にお伝えします

認知症を完全に治す薬は、いまのところありません。 ただし、進行を遅らせる薬はあります。早く使い始めることで、本人らしく過ごせる時間を長くできる可能性があります。薬は治療の一部であり、ケアや環境づくりと合わせて考えていくものです。

どの薬を使うか(使わないか)は、必ず医師が、本人の状態を見て判断します。ここでは、全体像を知るための整理としてお読みください。

これまでの薬(中核症状を対象)

主にアルツハイマー型認知症に使われる薬として、次の4種類が広く使われています。進行をゆるやかにするのが主な働きで、治す薬ではありません。

一般名主な商品名タイプ
ドネペジルアリセプトコリンエステラーゼ阻害薬
ガランタミンレミニールコリンエステラーゼ阻害薬
リバスチグミンリバスタッチ/イクセロンパッチ(貼り薬)コリンエステラーゼ阻害薬
メマンチンメマリー上記とは作用が異なり、併用できる

効き方や合う・合わないは人によって違います。副作用として、吐き気・食欲低下・下痢・体重減少、脈が遅くなる・ふらつき・失神、貼り薬では貼った場所のかぶれなどが出ることがあります。気になることは医師・薬剤師に相談し、自己判断でやめないことが大切です。

また、高齢の方は複数の病気でたくさんの薬を飲んでいる(多剤併用・ポリファーマシー)ことが多く、薬どうしの影響や、かえって頭をぼんやりさせる薬(一部の風邪薬・睡眠薬・胃腸薬などの「抗コリン作用」のある薬)が混じっていることもあります。お薬手帳を1冊にまとめ、かかりつけ薬局・薬剤師に「全部あわせて問題ないか」を見てもらうと安心です。

新しい薬(早期のアルツハイマー病が対象)

近年、これまでとは仕組みの違う新しい薬が登場しました。

  • レカネマブ(レケンビ):日本で2023年9月に承認、12月に発売。「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度の認知症の進行抑制」が対象です。
  • ドナネマブ(ケサンラ):日本で2024年9月に承認、11月に発売されました。

これらは、脳にたまるアミロイドβというタンパク質を取り除くことで、進行を遅らせることをめざす薬です。ただし、知っておきたい点があります。

  • 対象は、早期(MCI〜軽度)のアルツハイマー病に限られます。アミロイドβの蓄積を確かめる検査(PET・脊髄液検査)で対象かを確認します。
  • 症状を改善したり、進行を完全に止めたりする薬ではありません。遅らせる効果も限定的です。
  • ARIA(アリア)と呼ばれる副作用に注意が必要です。脳のむくみや微小な出血で、多くは無症状ですが、まれに重くなることもあります。そのため投与中は定期的にMRIで監視します。体質(APOEという遺伝子のタイプ)や、血をサラサラにする薬を飲んでいる場合はリスクが変わるため、専門医が事前検査のうえ慎重に判断します。
  • 定期的な点滴での通院が必要で、対応できる専門の医療機関に限られます。

新しい選択肢が増えたことは希望ですが、誰にでも使えるわけではありません。適応になるかどうかは、専門医に相談してください。早期に受診することの意味が、ここにもあります。

BPSD(困った行動)の薬には、特に注意が必要です

興奮や妄想などのBPSDに対して、抗精神病薬などが使われることがあります。効果が必要な場面はありますが、知っておいてほしい大切なことがあります。

  • 高齢の認知症の人では、転倒・誤嚥(食べ物が気管に入る)・脳卒中、そしてまれに死亡のリスクが高まると報告されています。漫然と続ける薬ではなく、必要最小限・短期間・定期的な見直しが原則です。
  • レビー小体型認知症の人は抗精神病薬に過敏に反応し、強い副作用が出やすいため、特に慎重さが必要です。

まず行うべきは関わり方や環境の調整で、薬はその次。「とりあえず薬で落ち着かせて」と安易に頼らず、本当に必要か・いつやめるかを医師と話し合いながら使うのが安全です。

よくある質問

Q. 薬はいつまで続けるのですか?

基本的には医師と相談しながら長く付き合っていく薬です。「効いているのか分からない」と感じても、自己判断でやめないでください。一方で、副作用が強いとき・効果が乏しいとき・終末期などでは、医師の判断で減量や中止が適切なこともあります。「ずっと飲み続けなければ」と思い込まず、続けるか・やめるかを含めて主治医に相談して大丈夫です。

Q. 飲み忘れが多くて心配です。

よくある悩みで、対策の定番があります。お薬カレンダー・服薬ボックスの利用、一包化(薬局で1回分ずつまとめてもらう)、ヘルパーやデイサービスでの服薬確認、貼り薬(リバスチグミン)への変更の相談。薬剤師・ケアマネに相談すると、その家庭に合う方法を一緒に考えてくれます。

Q. 新しい薬は高額と聞きました。

レカネマブなどの新薬は薬価が高額ですが、公的医療保険が適用され、自己負担には高額療養費制度の上限が効きます。実際の負担額は所得や加入保険で変わるため、検討する場合は医療機関の相談窓口(医療ソーシャルワーカー)に確認するのが確実です。

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※本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療・処方に代わるものではありません。薬の使用・中止・変更は、必ず主治医にご相談ください。

参考・出典

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