先に、要点だけ
- 認知症を完全に治す薬はまだないが、進行をゆるやかにする薬はある
- 新しい薬(レカネマブ、ドナネマブ)は早期のアルツハイマー病が対象。使えるかは専門医の判断
- 薬の効き方は人それぞれ。自己判断でやめず、気になることは医師・薬剤師へ
はじめに、大切なこと
認知症を完全に治す薬は、いまのところありません。 ただし、進行を遅らせる薬はあります。早く使い始めることで、本人らしく過ごせる時間を長くできる可能性があります。薬は治療の一部であり、ケアや環境づくりと合わせて考えていくものです。
どの薬を使うか(使わないか)は、必ず医師が、本人の状態を見て判断します。ここでは、全体像を知るための整理としてお読みください。
これまでの薬(中核症状を対象)
主にアルツハイマー型認知症に使われる薬として、次の4種類が広く使われています。進行をゆるやかにするのが主な働きで、治す薬ではありません。
| 一般名 | 主な商品名 | タイプ |
|---|---|---|
| ドネペジル | アリセプト | コリンエステラーゼ阻害薬 |
| ガランタミン | レミニール | コリンエステラーゼ阻害薬 |
| リバスチグミン | リバスタッチ/イクセロンパッチ(貼り薬) | コリンエステラーゼ阻害薬 |
| メマンチン | メマリー | 上記とは作用が異なり、併用できる |
効き方や合う・合わないは人によって違います。副作用として、吐き気・食欲低下・下痢・体重減少、脈が遅くなる・ふらつき・失神、貼り薬では貼った場所のかぶれなどが出ることがあります。気になることは医師・薬剤師に相談し、自己判断でやめないことが大切です。
また、高齢の方は複数の病気でたくさんの薬を飲んでいる(多剤併用・ポリファーマシー)ことが多く、薬どうしの影響や、かえって頭をぼんやりさせる薬(一部の風邪薬・睡眠薬・胃腸薬などの「抗コリン作用」のある薬)が混じっていることもあります。お薬手帳を1冊にまとめ、かかりつけ薬局・薬剤師に「全部あわせて問題ないか」を見てもらうと安心です。
新しい薬(早期のアルツハイマー病が対象)
近年、これまでとは仕組みの違う新しい薬が登場しました。
- レカネマブ(レケンビ):日本で2023年9月に承認、12月に発売。「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度の認知症の進行抑制」が対象です。
- ドナネマブ(ケサンラ):日本で2024年9月に承認、11月に発売されました。
これらは、脳にたまるアミロイドβというタンパク質を取り除くことで、進行を遅らせることをめざす薬です。ただし、知っておきたい点があります。
- 対象は、早期(MCI〜軽度)のアルツハイマー病に限られます。アミロイドβの蓄積を確かめる検査(PET・脊髄液検査)で対象かを確認します。
- 症状を改善したり、進行を完全に止めたりする薬ではありません。遅らせる効果も限定的です。
- ARIA(アリア)と呼ばれる脳のむくみ・出血に注意が必要です。無症状の場合もありますが、重症化することがあるため、薬ごとに定められた時期のMRI検査が必要です。頭痛、混乱、めまい、見え方の異常、吐き気、歩きにくさ、けいれん、話しにくさ、手足の力が入りにくいなどが現れたら、投与期間にかかわらず速やかに医療機関へ連絡してください。APOE遺伝子型や抗凝固薬等の使用でリスクが変わるため、検査の要否と治療可否は説明を受けたうえで専門医と判断します。
- 定期的な点滴での通院が必要で、対応できる専門の医療機関に限られます。
新しい選択肢が増えたことは希望ですが、誰にでも使えるわけではありません。適応になるかどうかは、専門医に相談してください。早期に受診することの意味が、ここにもあります。
BPSD(困った行動)の薬には、特に注意が必要です
興奮や妄想などのBPSDに対して、抗精神病薬などが使われることがあります。効果が必要な場面はありますが、知っておいてほしい大切なことがあります。
- 高齢の認知症の人では、転倒・誤嚥(食べ物が気管に入る)・脳卒中、そしてまれに死亡のリスクが高まると報告されています。漫然と続ける薬ではなく、必要最小限・短期間・定期的な見直しが原則です。
- レビー小体型認知症の人は抗精神病薬に過敏に反応し、強い副作用が出やすいため、特に慎重さが必要です。
まず行うべきは関わり方や環境の調整で、薬はその次。「とりあえず薬で落ち着かせて」と安易に頼らず、本当に必要か・いつやめるかを医師と話し合いながら使うのが安全です。
よくある質問
Q. 薬はいつまで続けるのですか?
基本的には医師と相談しながら長く付き合っていく薬です。「効いているのか分からない」と感じても、自己判断でやめないでください。一方で、副作用が強いとき・効果が乏しいとき・終末期などでは、医師の判断で減量や中止が適切なこともあります。「ずっと飲み続けなければ」と思い込まず、続けるか・やめるかを含めて主治医に相談して大丈夫です。
Q. 飲み忘れが多くて心配です。
よくある悩みで、対策の定番があります。お薬カレンダー・服薬ボックスの利用、一包化(薬局で1回分ずつまとめてもらう)、ヘルパーやデイサービスでの服薬確認、貼り薬(リバスチグミン)への変更の相談。薬剤師・ケアマネに相談すると、その家庭に合う方法を一緒に考えてくれます。
Q. 新しい薬は高額と聞きました。
レカネマブ・ドナネマブなどの新しい薬は薬価が高額ですが、公的医療保険が適用され、自己負担には高額療養費制度の月額上限が効きます(介護保険側の高額介護サービス費とは別のしくみで、医療費側の制度です)。実際の負担額は所得や加入保険で変わるため、検討する場合は医療機関の相談窓口(医療ソーシャルワーカー)に確認するのが確実です。
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※本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療・処方に代わるものではありません。薬の使用・中止・変更は、必ず主治医にご相談ください。
参考・出典
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