先に、要点だけ
- 受診を嫌がるのは、とてもよくあること。あなたの説得が下手なわけではありません
- 「認知症」と言わず、健康診断や「私のため」を入口にすると受け入れられやすい
- どうしても動かないときは、家族だけで地域包括支援センターや認知症初期集中支援チームに相談できます
「俺はボケてない! 病院なんか行かん!」
そう言って怒り出す。話をそらす。「お前のほうがおかしい」と返してくる。
認知症が疑われる家族を受診につなげようとして、この壁にぶつかる人はとても多くいます。最初に知っておいてほしいのは、本人が拒むのは、あなたの説得が下手だからではないということ。本人自身が「自分が変わっていく怖さ」をどこかで感じていて、それを認めたくない気持ちが「行かない」という形で出ているのです。
正面から説得するほど、こじれます。アプローチを変えましょう。
NGワードと、言い換えの例
| 逆効果になりやすい言い方 | 言い換えの例 |
|---|---|
| 「ボケてきたんじゃない? 病院行こう」 | 「最近眠れてる? 疲れてない? 一度みてもらおうよ」 |
| 「もの忘れ外来に行こう」 | 「健康診断、そろそろ受けよう。私も付き添うから」 |
| 「この前も同じこと言ってたよ」 | (指摘しない。話を合わせて、別の機会をつくる) |
| 「あなたのために言ってるの!」 | 「私が心配で眠れないの。私のためだと思って付き合って」 |
ポイントは3つあります。
- 「認知症」「ボケ」という言葉を使わない。体調・血圧・眠りなど、本人が受け入れやすい入口にする。
- 本人のためではなく「私のため」と頼む。「あなたはおかしい」と言われれば誰でも防御的になりますが、「私を安心させて」なら受け入れやすくなります。
- プライドを守る。人前で失敗を指摘しない。責めない。
信頼している人の力を借りる
家族の言うことは聞かなくても、別の人の一言なら動くことがよくあります。
- かかりつけ医:いちばんの定番です。先に家族だけで医師に相談しておき、定期受診や健診のついでに「年齢的に一度、頭の検査もしておきましょうか」と医師の側から言ってもらう。本人のメンツが保たれ、すんなり進むことが多い方法です。
- 孫:「おじいちゃん、長生きしてほしいから検査行って」は、子どもが言うより効くことがあります。
- きょうだい・旧友・民生委員:本人が一目置く人からの誘いも有効です。
ただし「待てないサイン」があれば、急いで
「急がず外堀を埋める」のは基本ですが、命や安全に関わるサインがあるときは、説得を待たずに動いてください。
タイミングと「引き際」
機嫌のよいとき、落ち着いているときに切り出し、嫌がられたらその場では引く。日を改めて、別の角度からまた誘う。一度の会話で決めようとしないことが、結局いちばんの近道です。
本人が転んだ、体調を崩した、もの忘れで本人自身が困った――そんな「本人が不安を感じた瞬間」は、受診を受け入れやすいタイミングでもあります。
それでも動かないとき ― 家族だけで使える公的サポート
本人を動かせなくても、打てる手があります。
- 地域包括支援センターに家族だけで相談する(無料)。「本人が受診を拒否している」という相談は日常的に受けており、関わり方の助言や、次の手につないでくれます。→ 探し方・連絡のしかた
- 認知症初期集中支援チーム:各市区町村に設置されている専門職チーム(医療・介護の専門職+専門医)で、受診や介護サービスにつながっていない人の自宅を訪問し、受診や支援への橋渡しをしてくれます。支援はおおむね6か月をめどとした期間限定で、体制には地域差があります。利用は地域包括支援センター経由で相談できます。「本人が絶対に病院に行かない」家庭のための、公的な仕組みです。
- かかりつけ医への往診・訪問診療の相談:外来に行けなくても、医療の側から来てもらえる場合があります。
よくある質問
Q. 嘘をついて連れて行ってもいい?
「旅行に行こう」と騙して病院へ、のような方法は、本人の信頼を深く傷つけ、その後の通院や介護がかえって難しくなりがちです。おすすめしません。「健康診断」「血圧の検査」のような嘘ではない別の入口を使うのが現実的です。
Q. 無理にでも早く受診させるべき?
緊急性(急激な変化・体の症状・事故の危険)があれば急ぐべきですが、そうでなければ、関係を壊してまで急ぐ必要はありません。数週間〜数か月かけて外堀を埋める(かかりつけ医に根回し、地域包括に相談、タイミングを待つ)方が、結果的に早く着くことが多いです。
Q. 放っておいたらどうなりますか?
「治る認知症」や他の病気を見逃すリスク、運転や金銭管理の事故リスクがあります。本人を動かせない間も、家族だけの相談(地域包括・初期集中支援チーム)は始められます。「待つ」と「何もしない」は別物です。
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※本記事は一般的な情報提供です。対応に迷うときは、地域包括支援センターや医療機関にご相談ください。
参考・出典
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