結論から
運動は、認知症のリスクを下げる可能性がもっとも確かに示されている生活習慣のひとつです。
世界保健機関(WHO)は2019年、認知症リスク低減のための初のガイドラインで、認知機能が正常な成人に対して身体活動を「強い推奨」としました。これは12の介入の中で最高位の推奨レベルです。
また、世界的な医学誌 The Lancet の委員会報告(2024年)は、運動不足を含む14の「変えられるリスク要因」に対処することで、世界の認知症の約45%は予防または発症を遅らせられる可能性があると報告しています。
最初に、誠実にお伝えしておきたいことがあります。認知症を確実に防ぐ方法は、いまのところありません。 運動をしていても発症することはあります。それは誰のせいでもありません。それでも「リスクを下げられる可能性が高い」ことには大きな意味があります。
なぜ運動が脳にいいのか
運動が脳を守る理由は、ひとつではありません。
- 脳の血流がよくなる — 脳の血管の健康は、認知機能と深く関わっています。
- 生活習慣病を防ぐ — 高血圧・糖尿病・肥満はいずれも認知症のリスク要因で、運動はそのすべてに効きます。
- 気分と睡眠が整う — うつや社会的孤立もリスク要因。体を動かすこと、特に誰かと一緒に動くことは、心の健康にもつながります。
つまり運動は、複数のリスク要因に同時に働きかける「ハブ」のような習慣なのです。
どれくらいやればいい?
WHOの身体活動ガイドラインでは、成人の目安は次のとおりです。
- 中強度の有酸素運動を週150〜300分(例: 早歩き30分を週5回)
- 筋力トレーニングを週2回以上
- (高齢の方)転倒を防ぐためのバランス運動を週3日以上(片足立ち、椅子につかまっての足上げなど)
「中強度」とは、少し息が弾むけれど会話はできる程度。いきなり全部やる必要はありません。 今日10分の早歩きから始めて、少しずつ増やしていけば十分です。
介護をしながらでも、できることから
このサイトの読者には、いままさにご家族を介護中の方も多いはずです。まとまった運動の時間が取れなくても——
- 買い物を徒歩にして早歩きにする
- デイサービスの送り出しのあとに10分歩く
- テレビを見ながら、椅子の立ち座りをゆっくり数回(ふらつくときは机や手すりにつかまって)
「自分の予防」は、介護をするあなた自身の心身を守ることでもあります。
安全のために:持病(心臓・血圧・関節など)のある方は、始める前にかかりつけ医に相談を。運動中に胸の痛み・強い息切れ・めまい・関節の鋭い痛みがあれば、すぐに中止してください。
大切なのは「続けること」
運動の効果は、続けてこそ。けれど「わかっていても続かない」のが人間です。続けるための仕組みづくりについては、別の記事で詳しく紹介する予定です。
※本記事は一般的な情報提供であり、医学的アドバイスではありません。持病のある方は、運動を始める前にかかりつけ医にご相談ください。
参考・出典
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